ビジネス・働きかた

大事な決断は避けたいタイミングとは?

日本人なら土用の丑の日はおなじみですが、この日は単にうなぎを食べるためだけの日ではありません。そもそも気学では、土用の期間は心と身体のバランスが崩れるため、大きな決断を避けた方がよいと考えます。ただ、「それなら7月の土用に注意すればよい」のかというと、それだけでは不十分なのです。土用は7月だけでなく、1年に4回あります。

年に4回の「土用」に注意

土用というと、現在では土用の丑の日ばかりクローズアップされるため、7月後半の時期のことを指すと思っている人が少なくありません。ところが実は、この時期のことだけでなく、立春、立夏、立秋、そして立冬と、季節の変わり目ごとにある18〜19日間の期間を指すのです。

つまり、土用は1年に4回もあり、しかも、1回の土用は1日だけではなりません。それぞれ18〜19日間あるため、年間を通して数えると70日以上にもなるのです。

土用とは、そもそも「雑節」という暦の一種であり、新しい季節に向けた準備のための期間と考えられていました。雑節というのは、二十四節気や五節句などのような暦の一種であり、中国から伝来した暦に日本の土着文化が合わさって、主として農業用に目安の時期をわかりやすくするために作られたものです。二百十日や八十八夜というのも雑節の一つとして知られています。

雑節のなかでも土用は、文字通り「土」とかかわりの強い期間です。もともと陰陽五行説という、すべてのものの成り立ちに火・水・木・金・土の5つの要素を置く説にもとづきます。これらはそれぞれ、火は夏、水は冬、木は春、金は秋に対応するのですが、これでは土だけ余ってしまいます。そこで、各季節が始まる前の時期を18〜19日間設けて、新しい季節のための準備期間としたのでした。これが土用です。

判断力が鈍りやすい

新しい季節の準備期間として、土用にはその迎える季節の気を育てる意味があります。また、土には、「土に還る」との表現があるように、物事の終わりを表す性質もあります。つまり、土とは、始まりと終わりであり、再生と破壊なのです。土用の期間には、そんな土の気が地上に満ち満ちています。そのため、さまざまなことが不安定になるとされているのです。

もちろん人の気持ちにも影響が及ぶため、土用には心と身体のバランスが崩れやすくなると言われています。衝動買いなどの思いつきの行動が増えたり、人と些細なことで衝突したりといったトラブルも起きやすいと言われており、簡単に言えば判断力が鈍りやすくなるのです。そのため昔から、土用は大きな決断をせずに慎重に過ごす時期とされてきました。

とはいえ、現代のビジネスシーンで、「土用だから重要な決断はしない」と押し通すわけにもいかないでしょう。実は土用だから何をするのもダメというのではなく、この時期であっても慎重に行動すれば多くのトラブルは避けられるのです。

一般的には、この時期には土にかかわることを避けるようにと言われています。たとえば、基礎工事や地鎮祭など建築関係のことや、庭木を移動したり花壇を作ったりなど住環境の変化についてなどです。では、なぜこれらの土と関係することを避けた方がよいのでしょうか。

土用は、土の気が新しい季節を迎えるためにいつもより盛んになっています。気が乱れているといってもよいです。そんな土を人がうかつに触ってしまうと、乱れた気によって健康に悪影響が及ぶこともあると考えられてきました。それゆえ、土いじりなど土に関することが戒められるようになったのです。

とはいえ、土用の全期間を土に触れないように過ごすことは現実的とは言えません。年間70日以上も土にまったく触れないように気をつけるとなったら、土木や建築、農業関係の仕事はできなくなってしまいます。もちろん昔からこれらの仕事にかかわる人はいたわけで、民のことを思った文殊菩薩が、土公神(どくじん)という陰陽道の土の神様を呼び寄せ、土用の期間にも土を触ってよい日を何日か作るようにお願いしたのでした。それを土用の間日(まび)と言います。

現代では土用だからという理由で仕事を控える人はいませんが、上述したように心と身体のバランスが崩れやすく、不調を感じやすいので、体調管理には十分に気をつける必要があります。それを基本とし、土用には新しい季節を迎える準備として、家の中の運気を高めることも意識してみましょう。たとえば、模様替えや大掃除などがよいでしょう。この時期に衣類などを陰干しすることを「土用干し」と言いますが、これも運気を高めるための年中行事だったのです。

なお、土用といえば今ではうなぎですが、五行説で、土用には相克関係にある干支の頭文字の付く食べ物を食べると良いとされてきたことと関係しています。夏土用は「う」から始まる食べ物が良いとされてきたのが理由です。うなぎのほか、梅干しやうりなども良いとされています。したがって、春、秋、冬の土用はうなぎではなく、それぞれに縁起担ぎの食べ物が決まっているのです。